パン作りでよく聞く「高加水とは?」加水率の基本からやさしく説明

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パン作りの中でも、一度は悩むのが「二次発酵で膨らまない」問題。特に高加水パンに挑戦していると、しっとり感の裏で扱いづらさに苦戦することも。

この記事では、高加水の意味や基準、普通のパンとの違い、初心者でも扱いやすい加水率、そして成功のコツまで詳しく解説。膨らまない原因に心当たりがある方も、ぜひチェックしてみてください。

パンの「高加水」とはどういう意味なのか知りたい

こちらでは「高加水パン」について、その本質に踏み込んで解説します。加水率とは小麦粉に対する水分の比率を示し、高加水とは通常より多めの水分を含んだ生地を指します。

加水率とはパン作りにおける水分量の比率

加水率は「水÷粉×100」で算出されます。例えば粉100gに対して水70gなら、加水率は70%となります。

一般的な加水率と比較してどのくらい多いのか

  • 60%未満:しっかりした食感(例:ベーグル)
  • 65%前後:ふんわりした食パンや菓子パン
  • 70~80%:高加水パン。しっとり・大きな気泡が特徴
加水率特徴
~60%しっかり・重め
約65%一般的なやわらかさ
70~80%しっとり・大きな気泡・軽やか

「高加水パン」と呼ばれる基準は何%から?

一般的には粉に対して70%以上を高加水と呼び、粉80%以上になると上級者向けとされるケースが多くあります。

なぜ高加水パンに注目が集まっているのか

  • 内側はしっとり、外側はパリッとした食感
  • 大きな気泡が生まれ、見た目にも美しい
  • 水分が内部に保持されやすく、日持ちしやすい

初心者でも扱える加水率の目安とは

まずは70%前後から始めるのがおすすめです。扱ってみて生地がベタつくようなら、水は少しずつ加えつつ調整しましょう。粉や気候によって吸水率は変わるので、感覚をつかむことが大切です。

高加水パンと一般的なパンの違いを比較したい

パン作りにおいて「高加水」という言葉を耳にしたことがある方も多いかもしれません。これは、生地に使う水分量が多いパンのことを指します。では、一般的なパンと比べてどんな違いがあるのでしょうか。こちらでは、生地の性質、食感、見た目、そして製法の難しさまで、具体的に比較してご紹介します。

水分量の違いがもたらす生地の性質

まず大きな違いは「加水率」、つまり小麦粉に対する水の割合です。一般的なパンは加水率60〜70%ほどですが、高加水パンは70〜85%にもなります。この数値の違いが、生地の状態を大きく変化させます。

  • 一般的なパン生地:弾力があり、まとまりやすい。
  • 高加水パン生地:非常にゆるく、べたつきやすい。

このため、高加水生地はこねにくく、機械を使うか、パンチ(折りたたみ)を何度か繰り返す製法が主流になります。

食感や見た目の違いを比較

水分量の多さは、食感や見た目にもはっきりと現れます。

種類食感見た目
一般的なパンふわふわで軽い気泡が小さく均一
高加水パンもっちり、しっとり大きな気泡が不規則に入る

特にクラスト(外側)はパリッと香ばしく、クラム(内側)はまるで加湿されたようなしっとり感。食感のコントラストが楽しめるのが高加水パンの大きな魅力です。

扱いやすさと製法の難易度の違い

高加水パンの人気が高まる一方で、初心者にはややハードルが高い点もあります。生地が手にまとわりつきやすいため、次のような工夫が必要です。

  • 手に水をつけて扱う
  • カードやスケッパーを使って移動・成形する
  • 一晩冷蔵発酵することで、生地を扱いやすくする

また、焼成にも時間がかかることがあり、オーブンのスチーム機能を活用したり、予熱をしっかり入れたりする工夫も欠かせません。

一方、一般的なパンは比較的成形しやすく、焼き加減の失敗も少ないため、家庭用オーブンでも安定した結果を出しやすいというメリットがあります。

高加水パンの魅力やメリットを知りたい

しっとり・もっちりとした食感

高加水パンの最大の魅力は、何といってもその独特の食感です。通常のパンよりも多くの水分を含んでいるため、焼き上がりはしっとり、そして内側はもっちりとしています。手でちぎると、グルテンの伸びが美しく、やわらかくて弾力のあるクラム(中身)が印象的です。

さらに噛むごとに水分がじんわりと口の中に広がり、小麦本来の甘みや香りを引き出してくれるのも特徴です。この食感に一度ハマると、他のパンでは物足りなく感じる人も少なくありません。

風味が豊かで日持ちしやすい

高加水パンは、通常のパンと比べて風味がしっかりしているのも大きな特徴です。これは水分が多く含まれていることによって、焼成中に酵母の風味や素材の香りがより一層引き立てられるためです。クラスト(外側の皮)はパリッと、クラムはじゅわっと、まさに香りと味のハーモニーが楽しめます。

また、高加水パンは水分保持力が高いため、時間が経ってもパサつきにくく、比較的日持ちするというメリットもあります。保存時には密閉しておくことで、翌日や2日目でもしっとり感が保たれ、美味しくいただけます。

主なメリットは以下のとおりです:

  • 香ばしいクラストとみずみずしいクラムのバランス
  • 焼きたてだけでなく、時間が経っても美味しさが続く
  • 小麦本来の味わいを堪能できる

プロのパン屋でも人気のスタイル

実は高加水パンは、プロの間でも注目されている製法です。水分量を増やすことでパンの風味や食感を高められるため、ハード系や食事パンを得意とするベーカリーでは積極的に取り入れられています。

高加水パンは生地が非常にやわらかく、ベタつくため、成形や発酵、焼成には高度な技術が必要です。そのため、家庭での再現はやや難易度が高く、製パン技術のひとつの“登竜門”として扱われることもあります。

とはいえ、最近では家庭用の高加水パンレシピも増えてきており、チャレンジする人も増加中です。発酵方法やオートリーズ(事前吸水)を取り入れたレシピなど、家庭でも扱いやすい工夫がされています。

パン職人が高加水パンを選ぶ理由:

  • 素材の風味を最大限に引き出せる
  • 食感の差別化ができるため、商品としての個性が出しやすい
  • 手間がかかる分、ファンの支持を得やすい

高加水パンは、ただ水分量を増やすだけではなく、製パン全体の設計を見直す必要がある奥深いパンです。だからこそ、プロからも愛され、一般の人々にも徐々に広まりつつあるのです。

高加水パンを作るときのコツや注意点を知りたい

高加水パンは、もっちりとした食感とみずみずしい口当たりが特徴ですが、生地の扱いが難しく、初心者にはハードルが高く感じられることもあります。ここでは、高加水パン作りにおける重要なポイントと注意点を詳しく紹介します。

ベタつく生地を扱うためのテクニック

高加水パンの最大の難所は、生地がとてもベタつくことです。手にくっついてまとまらなかったり、成形がうまくいかないという声もよく聞かれます。そうした悩みを解消するために、以下のテクニックが役立ちます。

  • 手を水でぬらす:油ではなく水を使うことで、生地との摩擦を減らし、ベタつきが軽減されます。
  • カードやスケッパーを活用:生地を移動させたり、折りたたむ際には、手を使わず道具を使うことで作業がしやすくなります。
  • 作業台に打ち粉をしない:高加水パンでは打ち粉を多用すると生地の水分バランスが崩れやすくなるため、基本的には使用しません。

このような工夫を重ねることで、ベタベタした生地でも扱いやすくなります。

オートリーズやパンチの工程を取り入れる

高加水生地は、通常のこね工程ではグルテンの形成が難しくなるため、「オートリーズ」や「パンチ」といった作業を取り入れるのが効果的です。

  • オートリーズ:粉と水を混ぜたあと、一定時間そのまま置いておく方法です。グルテンの自然形成が促され、こね時間が短縮されます。
  • パンチ(折りたたみ):発酵中に生地を優しく折りたたむ工程を数回行うことで、生地に張りを与え、グルテンを強化します。

これらの工程は手間がかかるように見えますが、ベタつきの強い高加水生地でも、しっかりとした骨格を持たせるためには欠かせません。とくに、手ごねで作る場合は効果が大きく出やすい方法です。

適切な発酵温度と時間の管理が重要

高加水パンでは、水分が多いため発酵が進みやすい傾向にあります。そのため、以下のポイントを押さえることが大切です。

  • 室温に注意:25〜28℃程度が発酵に適した温度ですが、気温が高すぎると過発酵になるリスクもあるため、夏場は特に注意が必要です。
  • 時間をかけて低温発酵:冷蔵庫でゆっくりと発酵させる方法は、過発酵を防ぎ、風味も深くなります。
  • 生地の状態をよく観察:時間ではなく、見た目や触感(ぷっくり膨らみ、指を押すとゆっくり戻る)で判断する癖をつけることが成功への近道です。

また、高加水パンは最終発酵でも広がりやすいため、型に入れる、もしくはしっかりと形を支える工夫も必要です。

高加水パン作りに向いている人・向いていない人を知りたい

生地を丁寧に扱える人には向いている

高加水パンは、その名の通り水分量が非常に多いパンです。加水率が80%を超えることも珍しくなく、その結果として生地はとても柔らかく、手にくっつきやすくなります。このため、手早く雑に扱ってしまうと生地が破れたり、グルテンの形成がうまくいかず、うまく焼き上がらないことがあります。

反対に、ひとつひとつの工程を丁寧に進められる人にはぴったりです。たとえば、生地を休ませる時間を惜しまない、優しく折りたたむように扱える、道具の使い方を工夫できるといった工夫ができる人は、高加水パンの魅力を最大限に引き出せます。

成形にこだわりたい人には不向きな場合もある

高加水パンの生地は非常に柔らかいため、一般的な丸パンやクッペのように形を整えて焼くのが難しくなります。型に流し込むような製法や、バゲット型のような限定された成形しかできないこともあり、パンの見た目にこだわりたい方にはやや不満を感じるかもしれません。

特に次のような方は注意が必要です:

  • パン作りで「美しい形」を重視している
  • InstagramやSNS用に映えるパンを作りたい
  • 成形の自由度を楽しみたい

このような場合には、まずは加水率をやや控えめにした中加水パンから始めて、扱いに慣れてから高加水に挑戦するのも一つの手です。

時間に余裕をもって楽しめる人におすすめ

高加水パン作りでは、通常のパンよりも発酵時間やオートリーズ(休ませる工程)などが多くなりがちです。さらに、パンチ(折りたたむ作業)を数回に分けて行う必要があるため、全体の作業時間は長くなる傾向にあります。

そのため、以下のような方に向いています:

  • パン作りを「時間をかけて楽しむ趣味」としてとらえている
  • 日常にゆとりがあり、途中で時間を見ながら生地の状態を観察できる
  • 週末や休日にじっくりとパン作りを楽しみたい

一方で、短時間で手軽にパンを焼きたい人、忙しい合間に効率よく済ませたい人には不向きかもしれません。高加水パンは「時間と手間をかけるほどに、おいしさで応えてくれるパン」と言えるでしょう。

まとめ

高加水パンは、水分量の多さによって生まれる独特のしっとり・もっちりとした食感や風味の豊かさが魅力です。加水率が高まることで扱いにくさはありますが、オートリーズやパンチなどの工程を工夫すれば、家庭でも十分に挑戦できます。一般的なパンとは異なる生地の性質や作り方を理解し、丁寧に生地と向き合う姿勢があれば、初心者でも少しずつステップアップ可能です。

見た目や食感の違いを楽しみながら、時間をかけてゆっくりとパン作りを楽しみたい人には、高加水パンはぴったりの選択肢。成形の自由度や見た目の整えやすさを重視する方にはやや不向きな面もありますが、素材本来の味わいを生かせる高加水パンには、手間をかけるだけの価値があります。

日常のパン作りにちょっとした冒険心を加えたい方は、ぜひ高加水パンにチャレンジしてみてください。

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トースくん
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焼成と粉の案内人
パン作りに欠かせない「発酵」と「粉」。 このブログでは、それらの奥深い世界を探求しながら、家庭でも再現可能な本格パンの知識や技術を発信しています。 管理人は、元ベーカリー運営者としての経験を活かし、 初心者のつまずきから上級者が悩むポイントまで、理論と実践の両面から解説します。 なぜこの粉を使うと食感が違うのか? なぜ発酵時間がパンの味に影響するのか? 「うまく焼けない」原因はどこにあるのか? そんな「なぜ?」に答えながら、パン作りの面白さと奥深さを一緒に深掘りしていきましょう。 趣味でも、仕事でも、パンに真剣なあなたの“研究仲間”として、お役に立てれば嬉しいです。
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